国際開発課題への挑戦:学校ハーブ園プロジェクト


代表の西口みちえです。今回は、私がなぜ学校ハーブ園プロジェクトという活動を取り入れつつ、会社という形でハーブティーの製造販売をしているかについて紹介したいと思います。

会社のウェブサイトで経歴を載せていますが、私は2006年よりNGO職員として、ザンビア、マラウィ、そしてカンボジアと、3か国で様々な国際開発事業に従事しました。

2008年にカンボジアに着任し、2010年ごろからある診療所の建設、それに続くシステム構築事業に参加しました。この事業に参加したことが、後年Roselle Stones Khmerを設立する大きな契機となりました。

世の中には、お金を生み出す設備とお金を使うだけの設備があります。例えば、食堂や雑貨店、養鶏場などは、お金を生み出す設備です。こういったものを事業の中で支援する場合、初期投資と運営が安定するまでの資金は必要ですが、基本的にはその設備を運営する中で収益が出て、中長期的な運営は自力で行えるようになります。一方で、学校などの教育施設、それに付随する図書館などの設備は、基本的にお金を使うだけの設備です。設立のための資金だけでなく、その設備が存在するあいだじゅうの運営管理費をどこかから確保しなくてはなりません。そのために、国際開発団体が学校建設などを支援する場合、政府や自治体との協定をしっかりと作り、建設から特定の期間までだけ資金援助をし、その後公的機関へ運営が移譲されています。これにより、学校の先生の派遣や施設運営予算は国から支給されます。給与額が国の生活水準に比して低すぎたり、支払日が遅れたりという課題は残念ながらありますが、支援団体が公的機関としっかりと合意を作ったうえで建設された学校は、支援期間終了後も継続的に運営されています。

これまで学校がなかった地域に、外部からの支援で学校が作られて、公的機関にうまく移譲され、地域の子どもたちが通える学校ができた。先生方も教育熱心。でも、国からの予算が少なく、恒常的に運営費が足りない。建物は時間が経てば老朽化する。子どもたちの家庭に寄付を募っても、貧しい地域なので集まる額はたかが知れている。そんなケースがあちこちで見られます。立地が良かったり人手がある学校のなかには、野菜や養殖魚を育てて販売し、運営費に充てているところもありますが、田舎へ行けば行くほど、自力でこういった収益活動ができる学校は限られてきます。それでは、もう一度事業を作って、その学校の改修工事をするのか?その後は?

私たちが関与することで、月々に換算すると少額ではあっても、自力で資金を生み出せる手段ができれば、持続的な学校運営のサポートになると思いました。実は学校ハーブ園の前身として、私がNGO時代に関与した診療所のハーブ園がありました。前述の「お金を生む設備」と「使うだけの設備」の理論で行くと、診療所は診察代という「お金を生む設備」になるはずです。私が当時関わっていた診療所は、「貧しい人にも平等に医療を」というモットーで、支払い困難な患者には薬代だけ、もしくは無償で治療をし、支払いができる患者からは正規の料金を頂くという料金システムを掲げていました。ただ、支払い可能層に比して支払い困難層が圧倒的に多く、常に資金不足に喘いでいたため、いつの頃からか私の役割は、システムを構築することよりも寄付金集めが主となっていました。これでは本末転倒ですし、寄付金に頼った運営は不安定で持続性がありません。診療代が期待できないのなら、何か他の手段で収益を出せないかと思った時に、診療所の周りの薬草を使う構想が、Demeterハーブティーの初代ブレンダーである谷許から出ました。診療所周辺に生えている薬草(ハーブ)を収穫して、手順に則って天日乾燥させる。それを販売して収益とするというやり方は、診療所だけでなく運営費不足に悩む学校などの施設にも応用できると思いました。ただ、学校の場合は教育が主たる目的の場所なので、資金を作るためだけにハーブを栽培するというのは趣旨にそぐわないと感じました。そんなとき、Roselle Stones Khmer社のアドバイザーである高田氏と出会い、彼が展開していた学校ハーブ園プロジェクトのアイディアを引き継がせてもらいました。これは、学校でハーブを栽培する事を通じて、1.学校の美化緑化を推進し、2.子どもたちが伝統文化に触れる機会を作り、育ったハーブを乾燥させることで 3.学校運営費の補填となる収益を得るというものです。

NGOという枠組みを離れ、社会企業という形でハーブ製品の製造販売事業を始めた理由は、NGOや国際機関が支援を行う中で生まれてくる「この学校の持続的運営のために少しでも現金収入があれば」という教育機関へ収入をもたらす役割を担いたいという思いです。助成金事業は裁可されれば投入される資金規模が大きいですが、時間もかかり条件的制約もあります。期間も限定されます。ハーブの買い取りという活動は、成功すればほぼ恒常的に継続することができます。一方的にお金を受け取るのではなく、能動的に生み出すことでオーナーシップも生まれます。カンボジア伝統薬草医療について子どもたちが触れる機会にもなります。学校ハーブ園プロジェクトを大きく展開するには、出来てくるハーブ原料の販売の強化と安定が不可欠です。あくまでも会社という形で、良質で購入者に愛される製品を販売展開することで、支援が第一目的ではない購入者層を確保し、販売量を高めることで協力できる学校の数も増やし、結果的に学校ハーブ園プロジェクトを長期的かつ広域的に展開することが可能になるという思いで、会社として登記をしました。

バタフライピーの世話をする生徒たち